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誤算と誤解の全日本選手権

 いろんな選手やスタッフのblog、レポートもそろってきて、いろんな疑問が少し解けてきた。そこで、全日本選手権ロードレースエリートを各チームの誤算と観衆の誤解をキーにしてまとめてみた。典型的な「たられば」の世界だけど、これも観戦者の特権ということで。

シマノの誤算その1

 最初の逃げの集団のメンバーを見たとき、シマノはいいメンバーを送りこんでいると思った。阿部、狩野、野寺というメンバーはどんな状況にでも対応できる。たとえ新城が一人逃げを狙ってもこの3人なら必ずチェックできると思った。後続の先頭にシマノが並んでいるのも、このいい逃げをつぶさないように集団のスピードをコントロールしているんだと思った。
 しかし、シマノの思惑は違っていた。シマノにとって再優先目標は「全日本を取ること」ではなく「オリンピック出場権を取ること」だった。自転車競技を長いこと見ていると、つい「オリンピックってついこのあいだまでプロ入り前のアマチュアの大会だった」ということで1段低く見てしまうが、チームを運営する側はそうはいかない。オリンピックという、日本中がわけもわからず注目するイベントに出ると出ないとでは、スポンサーとか会社とかの反応が全く違ってくる。シマノは特にそのプレッシャが強かったんではなかろうか。シマノ社から、自転車レースのことを知らない人を含む大量応援団が来るなんてことはこれまで聞いたことがない。
 そう考えると、シマノが先頭集団に新城と西谷がいる状況を嫌い、別府を早めに前に出して勝負に参加させ、オリンピックをより確実にしようとしたのもわからないでもない。

シマノの誤算その2

 追撃が開始されてもなかなか差がつまらなかったのが第2の誤算。ついには前から阿部を降ろして駒を1つ使ってしまう。阿部の引きで集団を詰めるが、結局阿部、畑中、鈴木、廣瀬という貴重な駒をレースの真ん中あたりで失ってしまう。

シマノの誤算その3

 せっかく追いついた別府だが、追い上げに加わって足を使い、チェックも厳しく、前の集団に加わることができなかった。「あれだけアシスト使うたんやから、それでも前に残らなあかんやろ」と言うのは簡単。

梅丹の誤算その1

 前の集団にいた新城がここで後ろの集団に落ち着いてしまう。別府とのにらみあい、牽制のしあいがあったのかもしれない。

梅丹の誤算その2

 梅丹にとっては、別府が前に乗れずにこの集団にいたことで別府を気にする必要が出てきた。またアジア選手権代表3人がいたことで、唯一代表を前の集団に送りこんでいる、この集団最大勢力の愛三がペースを落とすことになった。結果として集団が一気に開き、新城の飛び出すタイミングもずいぶん遅れてしまった。

愛三の誤算その1

 後ろの集団を思うままにコントロールした愛三だが、前にアシストを広瀬1人しか残せなかったのがあとに響いてくる。つくづく別府匠のパンクリタイヤが痛かった。別府のリタイヤを「誤算その1」にしてもいいかも。

梅丹の誤算その3

 3人がかりでも野寺を離せなかったのが最大の誤算。

愛三の誤算その2

 もう勝負に絡むことはないと思われた新城が、岡崎とともに猛追したこと。追いつかれないように広瀬を使い、西谷自身も消耗した。数的不利と疲労で西谷が脱落することになる。

ニッポの漁夫の利

 気がついたら先頭4人のうち2人がニッポ。シマノ、梅丹、愛三の3強とその次に来るニッポ、マトリクスのチーム力には少し差があると見られていたが、個々の力と適切な判断で存在感のあるレースをすることができた。

シマノ唯一の計算通り

 スプリント、しかもやや登りぎみのスプリントに強い野寺が最後まで粘って得意の形に持っていけたことはこの日唯一の計算通りだったんではないだろうか。

浅田監督のほほえみ

 先頭の4人のうち3人はいわば浅田チルドレン。このことはもっと評価されてもいいと思う。