本サイト/記事は移転しました。

約10秒後にリダイレクトします。

モーターペイシング中の事故で書類送検

 まずは新聞記事にツッコミを。

公道で練習中の競輪選手、車に追突し書類送検…大阪・堺
 堺市内の大阪府道で競輪の練習中、先導する風よけの乗用車の直後を自転車で走行し、追突事故を起こしたとして、府警泉北署は15日、同府和泉市の競輪選手(38)を道路交通法違反(車間距離不保持)の疑いで書類送検した。
 自転車の運転者が同容疑で書類送検されるのは異例。府警は「公道で練習する危険性に警鐘を鳴らしたい」としている。
 調べでは、選手は4月17日午前11時35分ごろ、堺市南区三原台の府道で、練習仲間の同府河内長野市の競輪選手(36)が運転する先導車との車間距離を1・8メートルしか取らず時速40キロで走行中、信号無視をして交差点に進入した和泉市内の無職女性(72)の乗用車を避けようと急ブレーキをかけた先導車に追突した疑い。自転車の選手は転倒し、右ひじに2週間のけがを負った。
 先導車の選手と無職女性は業務上過失致傷容疑で書類送検された。
 選手は「時速90キロで走ることもあった。交通ルールの違反はわかっていたが、ほかの練習法が見つからなかった」と供述しているという。
 日本競輪選手会(東京)は「日ごろから公道での練習では注意を払うように呼びかけている」としているが、禁止してはいない。
 自転車競技を巡る公道での事故としては、全国高校総体に出場予定だった千葉県内の男子高校生2人が7月下旬、所属する自転車部の練習で、千葉市内の市道を競技用自転車で走行中、道路脇に駐車していた乗用車に衝突、死亡している。
(2007年8月15日23時54分 読売新聞)

 「公道で練習するのが危険」なんじゃなくって、「公道でやると危険な練習方法がある」ってことだと思うんだけど、警察の意図が見えてますな。

2007/08/15-19:50 競輪選手が公道で事故=施設使えず練習中追突−大阪府警
 堺市内の府道で競輪の練習中、車間距離を空けずに追突事故を起こしたとして、大阪府警泉北署は15日、道交法違反(車間距離の不保持)の疑いで和泉市の競輪選手(38)を、先導した乗用車に乗っていた河内長野市の別の選手(36)を業務上過失傷害の疑いでそれぞれ書類送検した。
 2人は先導車が風よけになり、ペダルの回転速度を限界まで上げる練習をしていた。競輪場が使えないため、公道を使った。選手は「強くなるには道路で練習を続けるしかない」と供述したという。

 単に「競輪場がが使えないから公道で練習していた」って話ではなく、「(外でしかできない)モーターペイシングの練習をしていた」という話のはず。競輪場でモーターペイシング類似練習となるとドミフォンなんてのもあるけど、あまり現実的ではなさそう。

競輪練習中に事故、プロ選手を書類送検――車間距離不保持の疑い(8月16日)

 自転車で車の直後を追走する練習中に事故を起こしたとして、大阪府警泉北署は15日、プロ競輪選手(38)を道交法違反(車間距離不保持)容疑で書類送検した。

 事故は4月17日、堺市内の府道で起きた。自転車が約1.8メートル前方の車に追突、選手は軽傷を負った。車を運転していた別の選手(36)も業務上過失傷害容疑で書類送検された。

 車が作り出す無風状態を利用し、スピードを上げるのが目的。10年ほど前から続けており、2人は「違法と知っていたが強くなるためにやった」と話しているという。

 2人がどの部分を違法と思っていたのかが不明。送検容疑の「車間距離不保持」だったんだろうか?


 いちばん警察の意図がわかりやすい毎日新聞の記事。ネット上にはないようなので手打ち。

自転車にも車間距離違反
車風よけに練習 競輪選手が追突
大阪府警「悪質」と書類送検

 大阪府警泉北署は15日、堺市府道で、風よけのために仲間のワゴン車を前に走らせ自転車で追走する練習中、十分な車間距離を取らずに車に追突したとして、同府和泉市の競輪選手の男(38)を道路交通法違反(車間距離不保持)容疑で堺区検書類送検した。選手は「(同様の練習を)続ける」と供述、同署は悪質と判断。道交法に自転車の車間距離について規定はないが、四輪車の基準を適用した。
 選手は4月17日午前11時半ごろ、堺市南区三原台3丁の交差点で、仲間の競輪選手の男(36)=同府河内長野市が運転するワゴン車の後方1.8mを自転車で追走、横から交差点に侵入してきた和泉市の無職の女(72)運転の乗用車を避けるため急ブレーキをかけたワゴン車に衝突。自転車の選手が右腕に軽症を負った。
 同署は事故当時、自転車が時速約40kmで走っていたことから、四輪車を基準に15mの車間距離が必要だったと判断、選手を書類送検。仲間の選手も車間距離が不充分なことを知っていたとして、女についても信号無視して交差点に侵入したことが事故の引き金になったとして、いずれも業務上過失生涯容疑で書類送検した。【花牟礼紀仁】

 要するに「反省の色が見えない」ことが送検の理由ということのようで。素直に「もうしません」って誓約書もで書いておけばあっさり終わった話なのかもしれない。強い信念をお持ちのようで。
 場所はこのあたり。そんなに郊外でもない。いったことはないけど、泉北高速鉄道から近いし、たぶん住宅街。想像だけど、以前から住民からのクレームが警察に寄せられていたとか、警察が目をつけていたとかいう伏線があったんじゃなかろうか。
 で、容疑がなんで車間距離不保持なんだろうかという疑問が。事故を起こしたということ自体はもちろん、軽車両の最高速度違反とか整備不良(法律的には前後ブレーキが必要)とかでも送検はできそう。ただ、速度違反だったら、スピードガンで計ってでもいない限り「ずっと規定内で走っていますよ」といわれてしまうし、整備不良だったら規定を満たすように改造すれば逃れられる。事故だったら「気をつけてな」で終わり。ところが、「車間距離不保持がだめ」となるとモーターペインシングすべてがだめになる。おそらくは警察の意図として「危険なモーターペイシングを実質禁止に持っていきたい」ってのがあったんじゃないかと邪推。
 そう邪推しながら最初に引用した読売新聞の記事を読みなおすと、記事、というか警察の意図がかなりはっきりと見えてくる。


 選手にしてみれば「信号無視のバアちゃんのおかげでケガして、そのうえ書類送検されて、かなんなぁ」だろうし、ばあちゃんにしてみれば「ぶつかったわけちゃうし、大ケガでもないのに、妙な練習しとった競輪選手のおかげで書類送検みたいなおおげさな話になって、かなんなぁ」ってところだろうか。


 しかしこの車間距離不保持でほんまにその後の公判ができるの?「車間を詰めて煽って、しまいには追突した」っていう故意で悪質な事故ならともかく、ぶつかろうとかいうような意図の全くないこの状況では、容疑者側が本気で争ったら、起訴猶予とか無罪とかに持っていけるんじゃなかろうか。というか、これが使えるのなら警察はほとんどのドライバーを自由自在に逮捕できるぞ(この件では逮捕はしていないけど)。
 「自動車の基準を適用して」「時速40kmで15mの車間距離」ってことになったらロードバイクの集団走行もことごとく書類送検になるがな。
 調べてみたら、適切な車間距離については時速のkm数を2乗してその数値を100で割った数値をmとしたものという目安計算式があるらしい。時速20kmなら4m、時速15kmなら2.25m。朝の学校の周りは書類送検対象者だらけ。